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手術療法について

手術療法はなぜ効くのか?

なぜ、脳深部の特定の部位を「破壊」したり「刺激」したりすると、パーキンソン病の症状が改善するのでしょうか?そのメカニズムは次のように考えられています。

ポイントは、脳内の大脳基底核における「神経伝達物質」の流れ
―“興奮性物質”のグルタミン酸と、“抑制性物質”のGABA―

脳は約140億の神経細胞によって構成されており、神経細胞はお互いに情報をやり取りしながら、考えたり動く命令を出したりしています。神経細胞から伸びる電線のような部分(ニューロン)は電気的に情報を伝えていますが、ニューロンの先端、すなわち神経細胞と神経細胞の間(シナプス)では、「神経伝達物質」と呼ばれる化学物質が情報を伝えています。神経伝達物質による情報伝達は、電気的な情報伝達に比べ、時間がかかります。

大脳基底核の各部位

脳の深部にある「大脳基底核」(線条体淡蒼球外節淡蒼球内節視床下核視床を総称)と呼ばれる部位では、グルタミン酸という“興奮性”の神経伝達物質と、GABA(ギャバ)という“抑制性”の神経伝達物質が、情報伝達のネットワークを作っています。大脳基底核では、これらの神経伝達物質を使って情報伝達を行うことで、時間の遅延(タイムラグ)を作り、それを利用して複雑な運動のプログラミングを行っています。

手術療法により、運動を行うときの「神経伝達物質」の流れを正常化!

例えば、「ひじを曲げる時」のことを考えてみましょう。ひじを曲げると、力こぶを作る筋肉が“収縮”しますが、この時、反対側の筋肉は“伸びる”必要があります。両方の筋肉が同時に収縮したのでは、ひじは曲がりません。

正常時での情報伝達:① まずは「超直接路」から

さてその時、脳内では何が起きているのでしょうか。下図左は大脳基底核における活動状態を表しています。最初に運動の情報が伝わるのは、「超直接路」と呼ばれる情報伝達のネットワークを介して伝わります。
まず、「大脳皮質」「視床下核」でグルタミン酸(興奮性物質)による“興奮”が伝わり、一方で「淡蒼球内節」「視床」でGABA(抑制性物質)による“抑制”が伝わります。このため、最終的に一回りすることで、「大脳皮質」の活動には“抑制”がかかります。この“抑制”は、「大切な運動が始まる(ひじを曲げる=力こぶの筋肉を収縮させる)から、周りの筋肉は収縮するな!」という命令です。

正常時での情報伝達:② 次は「直接路」

そしてその直後に、運動の情報は「直接路」と呼ばれるネットワークを介して伝わります。
下図左の「線条体」「淡蒼球内節」でGABAによる“抑制”、さらに「淡蒼球内節」「視床」でもGABAによる“抑制”が入るので、結果、「視床」は抑制の抑制で“興奮”し、最終的に「大脳皮質」は“興奮”します。この最終的な“興奮”が、「力こぶを作る筋肉は収縮しろ!」という命令になります。

正常時での情報伝達:③ 続いて「間接路」

しかし、いつまでも筋肉が収縮していては困るので、その直後から「間接路」と呼ばれるネットワークを介して、「収縮は終わり!」という命令が出されます。
間接路では、「線条体」「淡蒼球外節」でGABAによる“抑制”、「淡蒼球外節」「視床下核」で再びGABAによる“抑制”、「視床下核」「淡蒼球内節」でグルタミン酸による“興奮”、「淡蒼球内節」「視床」で再びGABAによる“抑制”が入るので、結果、「視床」の活動は“抑制”され、最終的に「大脳皮質」の活動に“抑制”がかかります(下図左)。

パーキンソン病になると、“興奮”と“抑制”のバランスが崩れる

パーキンソン病では、「黒質」から「線条体」に情報を伝えるドパミン神経が障害されます(下図中×の部分)。通常ドパミンは、「線条体」から「直接路」と呼ばれるネットワークに情報を伝えるニューロンには“興奮”を、「間接路」と呼ばれるネットワークに情報を伝えるニューロンには“抑制”をかけます。したがって、パーキンソン病となりドパミンが減少すると、“興奮”と“抑制”のバランスが崩れて、「視床下核」は正常時よりも「淡蒼球内節」を強く刺激して“興奮”させ、その結果、「視床」の活動が強く“抑制”され、最終的に「大脳皮質」の活動が“抑制”されます(下図中)。

手術療法により、“興奮”と“抑制”のバランスを改善!

手術療法(下図右)では、「視床下核」の活動を抑えたり、「淡蒼球内節」の活動を抑えたりすることで、大脳基底核における“興奮”と“抑制”のバランスが改善され、「大脳皮質」の活動が正常化されるというわけです。

大脳基底核における情報伝達のネットワーク

【図提供】藤本 健一 先生

手術療法を行っても、パーキンソン病を完全に治すことはできず、薬が全く不要になるわけではありません。若い患者さんや罹病期間の短い患者さんでは薬が必要なくなることもありますが、手術療法は通常、薬と組み合わせながら、症状を改善していくことを目的とした治療法です。

(手術療法を希望されるすべての方が適応となるわけではありません。担当の医師にご相談ください)

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