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治療・副作用

レボドパの食前服用は、将来的に服用量の増大につながりますか。

ご質問について端的にお答えすれば、「レボドパの食前服用」によって「将来的に服用量がどんどん増える」ということは考えにくいと思います。

しかし、「レボドパの食前服用」が「服用量の増大」につながっているかのようにみえる場合もありますので、パーキンソン病の患者さんやご家族が、このような疑問をもたれるのも理解できます。

こちらのご質問の背景には、薬による治療や病気の進行に関わる大事なポイントがあると考えられますので、以下で詳しく解説してみましょう。

食前服用とは何か

パーキンソン病に限らず、多くの薬は食後服用が一般的です。これは食後だと、胃や腸が活動していてスムーズに薬が吸収されやすいことと、副作用を抑える目的からです。ただしレボドパの場合、食後服用だと、食べ物の影響で薬が吸収されにくいこともあります。

一方、徐々にパーキンソン病が進行すると、同じ量の薬を飲んでいても効果が早めに切れるウェアリング・オフが現れます。

ウェアリング・オフ対策として、できるだけ効果の切れ目をなくすためには、次のような方法があります。

1回の服用量を増やす
1日の服用回数を増やす
(例えば毎食後3回を、夕方に1回増やすなど)
食べ物の影響をなくし吸収をよくするため、食前服用に変える
(食前とは食直前ではなく、30分程度前が目安)
作用時間が長いレボドパ以外の薬を併用する  など

つまり、ちょうど薬の増量や服用回数の増加など「服用量の増大」を考慮し始める時期と「レボドパの食前服用」とが重なるため、両者に因果関係があるようにみえるのではないかと考えられます。
また、食前服用を検討する薬は食事によって吸収に影響が出るレボドパが対象になり、他の抗パーキンソン病薬は食後服用で構いません。

食前服用の注意点(1):効果の持続時間

食前服用は薬の吸収をよくする反面、急激にレボドパが吸収されるとジスキネジア(不随意運動)が出現しやすくなると考えられます(特にウェアリング・オフが現れているような場合)。

また食前服用では、早めにレボドパが吸収されるぶん、効き目が短くなる方もおられます。

このため、食後に比べて食前服用では、吸収がよくなることを見込んでレボドパの服用量を少し減らしたり(ジスキネジアを防ぐため)、レボドパの効果を長もちさせる薬を一緒に使用したりします。

また1日のうち全部ではなく必要な時だけ食前服用にしたり、服用時刻の間隔を必要に応じて伸ばしたり短くしたりし、時には服用量を均一にせず、よりよい服薬パターンを探していきます。

食前服用の注意点(2):吐き気

もう一つの注意点は、食前服用だと吐き気を催す場合があることです。しばらく飲み続けていると吐き気が消える例が多いのですが、特に飲み始めの時期は吐き気止めの薬を一緒に服用することがあります。

別の吐き気対策として、ビスケット1枚でもよいので少し食べ物を口にすると、吐き気を抑える効果や吸収を穏やかにする効果が期待できます。

ただ、食前服用はレボドパの吸収を高めるための一つの方法であり、合うか合わないかは個人差がありますので、必ずしも患者さん誰もが取り入れなければならないわけではありません。

長期治療を見通した服用量の調整

ご質問をよく読むと、質問者の方の不安は、食前服用そのものよりも、服用量が増えることのほうにあるようにも感じられます。こうした心配の背景には、大きく2つの理由があると考えられます。

一つはパーキンソン病に限らず薬自体への不安です。もう一つは、パーキンソン病の薬を増やすと、ジスキネジアなどの副作用が現れやすくなるのではないか、病気が進んだ時に薬をそれ以上増やせなくなるのではないか、といった不安があるのではないかと思います。

しかし、今やパーキンソン病の診療を行なう医師は、治療が長期にわたることを想定して対処をしています。私自身、実際の診療経験から、パーキンソン病患者さんの治療は15年以上に及ぶ場合が多いことを知っていますので(他に大きな病気をされないかぎり)、はじめの2,3年だけ調子がよければよいといった治療は行なっていません。つまり医師の側から不必要なほど多くのレボドパを処方することはありませんので、この点はご安心ください。

ただし、これは薬を少なめに処方するということとは話が別で、身体の状態がよくなるレベルまで、必要に応じてレボドパの量を増やしていくのが基本です。

レボドパは服用したものが、実際にどのくらい身体に吸収されるかは個人によって違いますし、どの程度の吸収量でどのくらい反応するかという感受性も異なります。ですから、服用量の数値が多いか少ないかではなく、実際にどのくらい効果が現れるかを見極めながら、一人ひとりの患者さんごとに必要なレボドパの量を決めていきます。

同じ患者さんでも時間の経過と共に必要なレボドパの量は変わっていきますので、それに応じた調整も必要です。

症状の改善に必要な量のレボドパを使用するという前提に立った上で、1日の総服用量が必要以上には増えないようにする工夫として、飲む回数を増やしたり、食前服用を取り入れたりといった方法があると考えていただいてよいと思います。

診察時間の都合でご相談がなかなか難しいかもしれませんが、折をみて、長期の治療についても主治医の先生と一度お話ししてみるのもよいかもしれません。

石川脳神経内科医院

〒693-0022 島根県出雲市上塩冶町1630番地 電話 0853-27-9056

石川 厚 先生

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