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パーキンソン病患者さんのための栄養管理

  • 総監修愛媛大学医学部附属病院 薬物療法・神経内科 教授  野元 正弘 先生
  • 編者愛媛大学医学部附属病院 栄養部
  • 編集責任者愛媛大学医学部附属病院 栄養部 部長  利光 久美子 先生

症状に合わせた食事のポイント

パーキンソン病患者さんは、パーキンソン病そのものによる影響、もしくは薬の副作用などによって、「食欲不振」、「嚥下障害(飲み込めない)」、「便秘」などの症状が現れる場合があります。しかし、そのような状況下でも、無理のない範囲で栄養を摂取することが大切です。
こちらの項目では、各症状に合わせた食事のポイントや注意点、レシピをご紹介いたします。
  • 食欲不振
  • 嚥下障害
  • 便秘
  • 食事をする際の注意点

「食欲不振」の原因と影響

先にも述べましたように(参照:『なぜ、食事療法が必要なのか?』)、パーキンソン病の治療において、脳内で不足するドパミンという物質を薬で補うことは必須です。しかしドパミンの作用は、脳神経のみではなく、腸の働きを抑制する作用も持っているため、吐き気や食欲不振、便秘といった症状が出現しやすくなります。薬の副作用が強い時には、吐き気止めの薬を食事の30~40分前に飲んで調整を行うことで少し調整することも可能ですが、「吐き気」があれば誰しも「食欲不振」になります。吐き気症状があっても、「これなら口にしようかな」と思われる食べ物をおすすめします。
また、「便秘」は多くのパーキンソン病患者さんが訴えられる症状の1つですが、お腹の張りや不快感から、吐き気につながることもあります。便秘改善薬の使用もやむを得ない場合がありますが、便秘改善のための食事療法を行い、上手に付き合うことが大切です。

食事の対策、ポイント

パーキンソン病治療中の食事や栄養について、大きな決まりはありません。食べられる時に食べられる物を食べましょう。

食欲がないとき

  • たくさん食べることができない時は、何回にも分けて軽食をとるようにしましょう。1~2種類と決まった食べ物しか食べられない状況であれば、食べられる物を食べてください。
  • 具合が良くなったら、他の物も食べてみましょう。
  • 食べる気がしない日は、多めに水分を摂るようにしましょう。

吐き気・嘔吐があるとき

  • 食べることを自分で否定しないで、心にゆとりを持ち、食べる気持ちを忘れないことが大切です。
  • 一度にたくさん食べる、食事中の飲み物は避けましょう。飲む場合は、食事の前後1時間は空けましょう。
  • 冷たく口当たりの良い、飲み込みやすい物がおすすめです。(卵豆腐、茶碗蒸し、冷や奴、冷やしそうめん、ヨーグルト など)

「食欲不振」時におすすめのレシピはこちら

「嚥下障害」の原因と影響

嚥下障害の症状は、パーキンソン病患者さんの約半数にみられるといわれています。パーキンソン病となり脳内のドパミンが不足すると、脳にある摂食中枢と嚥下中枢に運動の指令がうまく伝わらなくなります。その結果、のどの奥の筋肉の動きが低下して、口やのどを動かしたり、水分や食べ物を咀嚼(そしゃく)して飲み込み食道から胃へ送り込む、といった動作がスムーズに行えなくなることがあります。また、舌や咽頭部の運動障害などにより、唾液の分泌調整が難しくなる方もいます。

嚥下障害時の食事のポイント、注意点

パーキンソン病になると、飲み込むことが難しくなったり、食べ物がのどに詰まったり、誤って気管に入ったりしてしまうことがあります。食べ物が誤って気管に入ると誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を起こしてしまうことがあるため、急いで食べることは禁物です。口の中にある食べ物が無くなってから次の食べ物を口に入れるなど、ゆっくりと落ち着いて食べることが大切です。
飲み込みづらいなど嚥下障害の症状がみられる場合は、「とろみをつける」、「食べ物をブレンダー状にする(ミキサーにかける)」、「ゼリー状に固める」といったように、食事形態を工夫することで咀嚼や嚥下を助けることができます。以下に、料理のワンポイント(食事形態の工夫)と、嚥下障害がみられる場合の食事のポイントをご紹介します。

嚥下障害がみられる場合の食事のポイント

  • 食べ物の大きさを、一口で飲み込める程度の大きさにしましょう。
  • やわらかく飲み込みやすい料理にしましょう。
  • 堅くてのどにつかえそうな食べ物は控えましょう。
  • 水分でむせることがあれば、とろみをつけましょう。
  • 水分を多く含む果物などは、むせる原因となることがあるので注意しましょう。
  • ひどくむせることがあれば、無理には食べず、まず主治医に相談しましょう。

「嚥下障害」時におすすめのレシピはこちら

「便秘」の原因と影響

便秘は多くのパーキンソン病患者さんにみられる症状で、日常動作が乏しくなったり、活動量が低下したりすることで起こります。食欲がないことで普段より食事量が減ったり、水分量が減ったりすることも便秘の原因になります。また便秘は、自律神経障害に伴う腸管機能の低下によって起きるだけでなく、パーキンソン病の薬の影響によって起きることもあります。
便秘の改善につなげるためにも、特に朝食は必ず摂って胃や腸の反射を促すとともに、散歩や適度な体操など可能な限り体を動かすように努め、3日に最低1回は排便があるよう心がけましょう。便秘改善のために薬を使う場合もありますが、毎日の食事にも気を付けて、腸の働きを助ける工夫が大切です。

便秘時の食事のポイント、注意点

便秘の改善には、食物繊維や水分の摂取が効果的であることをよく耳にするかと思いますが、不溶性の食物繊維を多く含む食品(れんこん、ごぼう等)については、堅くて食べにくいものが多いと思います。胃腸の調子が悪いときや、食欲不振で食事の量が多く摂れないときに、食物繊維を多く含む食品を摂るのは難しいでしょう。そこでおすすめなのが、豆類や穀物です。これらの皮には不溶性の食物繊維がたっぷり含まれるほか、水溶性の食物繊維、ビタミン、ミネラルも豊富です。同時に、植物性の良質なたんぱく質や、エネルギー源になる炭水化物も一緒に摂ることができます。

便秘がみられる場合の食事のポイント

食物繊維の摂取

  • 不溶性の食物繊維は、便のかさを増やし、腸の動きを良くします。
  • 水溶性の食物繊維は、腸内の善玉菌のエサとなり、善玉菌を増やしてくれます。

生菌食品(ヨーグルトなど)の摂取

  • 腸内の善玉菌は、感染や腸内腐敗を防ぎ、腸の動きをスムーズにする原動力となります。
  • 腸内の善玉菌を増やすためには、生菌食品や、善玉菌のエサとなる食物繊維、オリゴ糖を摂りましょう。

適量の植物油の摂取

  • 油には、便を軟らかくし、すべりを良くする働きがあります。
  • 特に、オリーブ油に含まれる一価不飽和脂肪酸のオレイン酸は、腸壁を刺激して腸の動きを良くします。

水分補給

  • 大腸は、身体に必要な水分を再吸収する働きがあります。
  • 水分の摂取量が少ないと便が硬くなり、便秘の原因の1つになります。

「便秘」時におすすめのレシピはこちら

「食事時間」がレボドパの効果に与える影響

パーキンソン病治療の中心となる薬であるレボドパ(L-ドーパ)は、“空腹時”に服用すると効果が早く現れる半面、効果が切れるのも早いという特徴があります。一方、“食後”に服用するとレボドパはゆっくりと吸収されるため、効果が現れるのは遅くなりますが、効果もゆっくりきれる、というメリットがあります。そのため、レボドパの服用時間と食事の時間は、個々の患者さんの生活状況や薬の効果に合わせながら、主治医と相談して調整することが推奨されます。
レボドパを“食後”に服用する場合、レボドパの効果は、食べた料理や食品の種類、量に影響を受けることも少なくありません。また、胃酸の濃度によってもレボドパの吸収は変化するといわれています。例えば、レボドパを水ではなくレモンジュースやグレープフルーツジュースなどで服用すると、レボドパの吸収が促進されて効果が早く現れてくることもあり、ジスキネジアなどの症状が現れやすくなる可能性もあることから注意が必要です。

「食事内容(たんぱく質)」がレボドパの効果に与える影響

食事中に摂取するたんぱく質(中性アミノ酸)が多いと、レボドパの吸収や脳への取り込みが阻害される可能性があります。そのため、食事の影響を受けやすい方に対しては、レボドパを服用するときに、血液中のたんぱく質の量を調整することを目的とした食事方法、「たんぱく質再配分法」が推奨されます。
たんぱく質再配分法とは、朝食時と昼食時に摂取するたんぱく質の量は7~15gに減らし、その不足分を夕食時に補って1日に必要な量を摂取するという方法です。1日3回の食事で摂取するたんぱく質の量の配分を変えており、朝食時と昼食時はたんぱく質の摂取を控え、夕食時には必要なたんぱく質を中心に摂取します。
レボドパを5、6 年以上服用していると、薬の効いている時間が短くなってくることがあり、薬の服用時間に関係なく、急に動きが良くなったり悪くなったりすることがあります(オン・オフ現象)。こういった症状を軽減するためには、薬の服用時間や食事時間、さらにはたんぱく質の摂取量などを調整することが期待されます。主治医から「たんぱく質」の摂取量の食事指導を受けている方は、下記の食事方法を試みても良いと思います。

「たんぱく質」の摂取量の食事指導を受けている方におすすめの食事方法 (目安)

  朝 食 昼 食 間 食 夕 食
エネルギー量 500kcal 600kcal 100~200kcal 600~700kcal
たんぱく質 12~15g 12~15g 0~3g 30~35g
注意点
  • たんぱく質の多い食品の摂取は少量に留める
  • たんぱく質の多い食品を使用していない副食3~4品を摂取する
  • 3食分の食事量が確保できている場合は、間食程度の量を摂取する
  • 食事量が減少している場合は、朝食の半量程度を摂取する
  • たんぱく質の多い食品を3つ使用した副食3~4品を摂取する

たんぱく質の多い食品

  • たんぱく質の多い食品:大豆製品、魚、肉、卵、大豆
  • 比較的たんぱく質の多い食品:豆類、小豆
  • その他、すべての食品には、多少なりともたんぱく質が含まれています(一部を除く;砂糖、油など)

「たんぱく質」の摂取量の食事指導を受けている方におすすめのレシピはこちら

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